商号を決める際に注意にすること

「商号」には守らなければならないルールがあり、そのルールを守って商号を付けなければ会社を設立することができません(矢印「商号の5つのルール」はこちら)。逆に、このルールさえ守っていれば、会社の設立手続きは問題なく完了することができるということです。

しかしながら、今後の会社の営業的側面で考えた場合、そのルール以外にも、商号を付ける際に気を付けなければならないことがあります。それは、「不正競争の防止」と「商標権」の2つの観点からです。

1.不正競争の防止

会社法第8条第1項には、『何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない』と規定されています。また、不正競争防止法においても同じような内容が規定されています。なので、本来なら「商号の5つのルール」にこの項目をもう一つ加えてもいいところです。

ですが、この不正競争の防止に関しては、公証役場においても、法務局においても、事前にチェックしてくれることはありません。不正競争の防止において問題があるような商号であっても、会社は問題なく設立することができてしまうということです。だから、会社設立手続きという観点からすると、絶対的ルールではないのです。

しかしながら、この「不正競争の防止」の問題は、後で大きな問題に発展する可能性があるのです。例えば、損害賠償を請求されたりだとか、商号の使用が差し止められてしまうとか。だから、この問題については自己責任でやるしかありません。

ここで把握すべきことは、『他の会社であると誤認されるおそれがある商号』というのが、具体的にどのようなものを指しているかです。それには、以下の記載した「会社法施行前に類似商号と見做されていたケース」などが参考になります。

【会社法施行前に類似商号と見做されたケース】

  1. 発音が類似している   例えば…「阪急」と「半久」など
  2. 文字が類似している   例えば…「大丸」と「太丸」など
  3. 観念上類似している   例えば…「平和堂」と「和平堂」など
  4. 営業地域の地域名・地域を表す部分のみが相違するもの
    例えば…「広益舎」と「東京広益舎」など
  5. 店名や事務所名を表す部分のみが相違するもの
    例えば…「ワハハ本舗」と「ワハハ総本店」など
  6. 6. 営業規模や新旧を表す部分のみが相違するもの
    例えば…「新日本設備」と「大日本設備」など
  7. 共通の事業目的だが、業種が相違するもの
    例えば…「武田薬品」と「武田薬局」など
  8. 業種を表す部分が包括的・抽象的なもの
    例えば…「三菱商事」と「三菱工業」など
  9. ローマ字表記で、同じような読み方をするもの
    例えば…「H・S」と「エイチエス」など
  10. その他、代表的な地名を表すもの(「日本」「東京」「にっぽん」「とうきょう」「ジャパン」「さいたま(さいたま市の場合)」)や「新」「大」「ニュー」あたりのものもチェックして下さい。法務局によっては、これらが付いている商号だけ集めたファイルがある場合もあります。

ただ、類似した商号でないかの調査を全国にある会社を対象にすることは不可能です。問題は、この調査対象をどこまで絞り込むかです。

類似商号で問題になるケースの可能性を考えると、少なくとも相手側の会社が世間的に知名度があることが前提になると思います。まず、「トヨタ」「ソニー」など、世間に知れ渡っている会社名と見間違えるような商号を付けてはいけないことは誰にでも分かると思います。次に、インターネットで自社の商号名で検索して、そこそこ規模が大きくて知名度がありそうな会社をピックアップして、そのような会社名と見間違えるような商号は付けないことです。

問題は、自分は知らないけど、地元ではかなり知名度がある会社があることがあります。このような会社の会社名と見間違うような商号を付けるのを避けるためには、会社法施行前には必然の調査であった「類似商号調査」をやっておくのが無難だと思います。まっ、ここまでやるかどうかは自己責任の範疇ではありますが、以下にその調査方法を記載しておきます。

【類似商号調査のやり方】

類似商号調査は、本店所在地(会社の所在地)を管轄する法務局で実施することになります。
最近では、法務局に商号調査用のパソコンが設置されており、そのパソコンで簡単に検索できる法務局が増えています。パソコンの「商号調査」という部分をクリックすると、会社名を入力する箇所が出てきますので、その中に自分が付けようとしている会社名を入力すると、類似する会社名の一覧が表示されます。
さらに、その会社名をクリックすると事業目的が出てきますが、事業目的が被っていなければ類似商号には該当しませんのでOKです。

また、法務局によっては、商号調査用のパソコンが設置されていない場合があります。そのような法務局での類似商号調査のやり方は、次のようになります。

考えた商号(会社名)案を持って管轄の法務局に行きます。その際には、認印と筆記用具を持参します(認印と筆記用具は必要ない場合もあります)。法務局行くと閲覧申請書がありますので、それを記入し窓口に提出します。すると、窓口の方がファイルのある場所を案内してくれます。
その場所に市町村区別のファイルがありますので、それをまず閲覧します。ファイルには会社名が50音順に並んでいますので、そのファイルで類似する商号があるかないかを調べます。もし、類似する商号があった場合には、その会社番号が記載されていますので、その番号をメモしておきます。

 次に、会社番号別のファイルがありますので、さっきメモした番号のファイルを探します。そのファイルの中から、先ほどのメモした会社を見つけ出し、その事業目的を確認します。もし、事業目的が違うなら、不当競争防止法に触れることもありませんので、その場合は商号が同一若しくは類似していようがまったく構いません。

 類似商号は、自分の会社が株式会社であっても、株式会社だけではなく、合同会社・合資会社・合名会社・個人事業で登記されている商号について全部調べなくてはなりません。法務局によってはファイル形式が違うということもあるようですので、詳しくは管轄の法務局で確認してください。

また、ネット上で「財団法人民事法務協会」が運営している「登記情報提供サービス」というサイトがありますが、ここでも類似商号調査をすることができます。
ただ、このサイトは使用するのにクレジットカードナンバーの登録が必要になります。
また、類似する商号(会社名)を検索するまでは無料で出来ますが、事業目的まで確認しようとすると有料になってしまうことが難点です。類似する商号(会社名)がまったくない場合や1つか2つの場合ならまだしも、何十個も出てきた場合、そのひとつひとつの会社の事業目的までを調べるとかなりの金額になってしまいます。
だから、「登記情報センター」サイトの使い方としては、とりあえず検索をして該当する会社名がたくさん出てきたら、法務局に行って調査するといった使い方が良いのではないでしょうか。

2.商標権

上記の「不正競争の防止」の問題に発展するかどうかは、「不正な目的があったのか?」「相手側に損害が生じたのか?」などの判断で、実際には不正競争には該当しないと判断されることもあります。

しかし、この「商標権」については、問題に発展するかどうかは明確です。それは、どのような実情であろうとも商標権を登録している会社の権利が優先されるからです。ただ、商号を付ける時に必ずこの商標権に注意しなければならないかというと、そんなことはありません。

では、どういう場合に商標権に注意しなければならないか?それは、商号(会社名)をそのまま商品やサービスの名称として使用する場合です。それは、「商標権」とは、自社がその商品名やサービス名などのいわゆるブランド名やロゴなどを独占的に使用するための権利として登録されたものだからです。商号(会社名)をそのまま商品やサービスの名称として使用する場合は、他社が既にその名称を商標権登録していないかどうかを調べておく必要があります。

商標については、特許電子図書館のホームページで調べることが出来ます。 矢印 特許電子図書館サービス一覧 
※このページの「初心者向け検索」をクリックし、さらに「商標を検索する」をクリックして、そのページのステップ1から文字を打ち込む箇所に商号(会社名)を打ち込んで、検索実行ボタンを押してください。

以上が、商号に決める際に注意すべきことの説明となります。


商号を決めたら、次は、その会社がどのような事業を行うのかを明確にする必要があります。これを「事業目的」といいますが、それでは、次は「事業目的」について説明することに致しましょう。

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