資本金額を決める際の4つの注意点

「資本金とは?」のページで、「資本金」がどういうものなのかが大体お分かり頂けたと思います。さて次は、設立時の会社はどれくらいの資本金額にすべきなのか?を説明していきたいと思います。

資本金額は多ければ多いに超したことはありません。資本金の多寡だけで会社の優劣が決まるものではありませんが、会計知識のあまりない一般の方には、資本金の多い会社というだけで財政基盤がしっかりしていて信用できる会社だと認識する人が多いからです。だからと言って、資本金として拠出できる金銭等が無尽蔵にあるわけではありませんよね。そこで、どれくらいの資本金額が妥当なのかを考える必要があるわけです。

さて、会社設立時の資本金額を決める時には、以下の4つの観点で注意していただければと思います。

  1. 元手として最低限必要な下限値
  2. 融資金額との整合(元手が足りなくて融資が必要な場合)
  3. 許認可の財産的要件との整合(会社設立後に許認可が必要な事業をする場合)
  4. 節税を考慮した上限値

それでは、4つの観点を一つ一つ見ていくことにしましょう!

1.元手として最低限必要な下限値

資本金というのは「商品を仕入れたり」「事業に必要となる什器備品を購入したり」「自分の会社の従業員に対する給料などを支払う」などの元手になります。ですので、当初のある程度の期間までの、商品を仕入れたり、什器備品を購入したり、給料を支払うなどの支出金は、資本金として用意することがベストです。それは、支出の支払いが売上金や資本金でまかなえなくなった場合、その不足分をどこからか借りなければならないことになり、貸借対照表上の負債に計上され、会社の財産状況の見え方が悪くなるからです。

不足分をどこからか借り入れてくる必要がないように最低限の資本金を用意するというのが、「元手として最低限必要な下限値」という観点です。

さて、この下限値を具体的にどのように推し量るかというと、やはり資金繰り表を作って算出するしかないと思います。
それでは、以下の表をご覧ください。

1ヶ月目2ヶ月目3ヶ月目4ヶ月目5ヶ月目6ヶ月目
予測売上200万円300万円400万円500万円600万円700万円
予測経費500万円500万円500万円500万円500万円500万円
差額 -300万円 -200万円 -100万円 0円 +100万円 +200万円

上の表は、設立後の月別の売上と経費の予測を表したものです(分かり易くするために、項目も金額も単純化したものにしていますし、本来なら開業時の設備費用等も計算に入れる必要があります)。
3ヶ月目までで累計600万円のマイナスが出ています。設立時の資本金が300万円しかなかったとしたら、あとの不足分の300万円はどこからか調達してこなければなりません。この300万円を借入すれば、300万円が負債として計上されることになります。負債が多いということは、会社の資産状況を対外的に評価してもらうときには、あまり好ましい状態ではありませんよね。 だから、この不足する300万円が元々手持ちにあるならば、あとから補充して負債として計上するよりは、最初から資本金にプラスしておいた方が対外的な信用も得やすいというわけです。

現在は、昔ほど資本金額の多寡で会社の信頼性を計ることがなくなりましたので、決して無理して資本金額を上げる必要はありませんが、少なくとも事業開始当初の資金が計画上ショートしないぐらいは、資本金として投入した方がベストです 。

2.融資金額との整合(元手が足りなくて融資が必要な場合)

「少なくとも事業開始当初の資金がショートしないぐらいは、資本金として投入した方がベスト」と言っても、どうしても手持ちの資金では足りないこともあります。そんなときに不足する資金を調達する一つの手段として"融資"という方法があります。

でも、会社設立時当初の融資の場合、融資に必要な金額と同金額(どんなに少なくても半分の金額)分の資本金額にしておかなければならないのです。それは、創業の際の融資機関として最も利用されている日本政策金融公庫が、融資要件にそのような要件を設けているからです。※担保等があれば話は別です。

例えば、資本金が100万円しかないのに、500万円の融資は望めないということになります。少なくとも250万円ぐらい、出来れば500万円ぐらいの自己資金がないと、500万円の融資は望めないということになります。
厳密に言うと、日本政策金融公庫が求めているのは資本金の要件ではなく自己資金の要件なのですが、会社設立時は、自己資金と言えば、まず資本金で判断することになるからなのです。

ただ、500万円の自己資金があったら必ず500万円融資してくれるというわけでもありません。融資金額が0円という可能性も当然あり得えます。 融資を受けるときには『融資が万が一取れなった場合も想定しておく』ということが大事になると思います。

3.許認可の財産的要件との整合(会社設立後に許認可が必要な事業をする場合)

会社設立後に許認可を必要な事業をする場合は、資本金額にも注意を払う必要があります。それは、許認可事業によっては、許認可の要件として財産的要件を掲げている場合があるからです。

例えば、建設業の許認可の場合には、以下のような財産的要件があります。

一般建設業許可の財産的基礎要件 (いずれかに該当すること)
@自己資本が500万円以上あること。
*貸借対照表「資本の部」の「資本合計」の額を「自己資本」といいます。
A500万円以上の資金調達能力のあること。
*金融機関発行の500万円以上の預金残高証明書等
B直前5年間許可を受けて継続して営業した実績のあること(更新の場合)

 また、労働者派遣事業については、以下のような財産的要件(平成21年度に、以下のように改訂されました)があります。

【一般労働者派遣事業】
(1)財産的基礎に係る要件(資産要件)
[1] 基準資産額に係る要件について
「1,000万円×事業所数」から「2,000万円×事業所数」に改めたこと。(注)基準資産額=資産額−負債額
[2] 現金・預金の額に係る要件について
「800万円×事業所数」から「1,500万円×事業所数」に改めたこと。

このように会社設立直後の許認可の財産的要件は、ほぼ設立時の資本金額で判断されると思われるので、資本金額を決める際にも許認可の財産的要件をよく確認しておかなければなりません。

4.節税を考慮した上限値

資本金額を決めるときに、節税という観点からみると、「消費税」と「法人住民税」に気を付けなければなりません。

消費税には、「事業者免税点制度」というものがあります。「事業者免税点制度」とは、ある要件を満たすと消費税の課税が免除されるというものです。
※この事業者免税点制度については、ポイント18のところで詳しく説明させていただき
ます。

但し、この事業者免税点制度は、資本金1,000万円以上で設立された会社には適用されません。

 なので、消費税の事業者免税点制度が適用されるためには、資本金1,000万円未満で会社を設立する必要があります。

次に「法人住民税」についてですが、均等割りの部分が、資本金によって下の表のように変わってきます。

※東京都特別区の場合は「東京都特別区の都民税」の欄の金額が、法人住民税の均等割りの部分の金額になり、それ以外の地域は「市町村民税」と「道府県民税」を合わせた金額が法人住民税の均等割りの部分の金額となります。

 上記表を見ても分かるように、資本金が1000万円だと支払う法人住民税の均等割の部分の金額が7万円ですが、資本金1000万円を超えてしまうと、支払う法人住民税の均等割の部分の金額が18万円と、一気に倍以上の金額になってしまいます。
このように、「消費税」と「法人住民税」の節税という観点から考えると、資本金の金額は1000万円未満に抑えておくほうが良いということになります。


それでは、次に「設立手続きの形態」を見ていくことにしましょう。

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