事業年度を決める際に注意にすること

事業年度を決める際には、以下の4つの観点を相互的に考慮して決めなければなりません。

  1. 消費税の免税期間
  2. 資金繰り
  3. 在庫高
  4. 需要のピーク

それでは、一つづつ説明していくことにしましょう!

消費税の免税期間

消費税には事業者免税点制度というものがあります。 この「消費税の事業者免税点制度」とは、法人の場合、その事業年度の前々事業年度の課税売上高が1,000万円未満の場合、消費税の課税が免除されるという制度です(但し、資本金1,000万円以上の会社には適用されません)。
つまり、新しく設立した会社は1期目も2期目も前々事業年度が存在しないわけですから、2期間は事業者免税点制度の適用を受けられるということになります。ですので、第1期の期間をいかに長くするかによって、支払う消費税の額も大きく変わる可能性もあるわけです。

もう少し分り易く説明しますと、例えば、1月に会社を設立して、その会社の決算月が3月だとします(1月15日に設立した会社の事業年度が「4月1日〜翌年の3月31日」の場合ということです)。そうすると、第1期の期間はわずか3ヶ月足らずで迎えることになります。この場合は、免税期間は第1期の3ヶ月+第2期の12カ月=約15ヶ月ということになります。

これに対して、1月に会社を設立してその会社の決算月が12月(1月15日に設立した会社の事業年度が「1月1日〜12月31日」の場合ということです)だとすると、第1期の約12カ月+第2期の12カ月で、免税になる期間は約24ヶ月間ということになります。

このように同じ1月の会社設立であっても、決算月を3月、又は、12月にするかによって、約9か月分の消費税の支払い金額が変わってしまうということになります。ですので、消費税の免税事業者としての期間を少しでも長くするためには、第1期をなるべく長く取れるように事業年度を設定すること必要になってくるのです。

資金繰り

企業にとって、資金繰りというのは非常に重要なものです。それは、たとえ利益が出たとしても、資金繰りが途絶えてしまったら事業を継続していくことが出来ないからです。そして、決算月をいつにするかによって、この資金繰りに大きく影響を及ぼす場合があるのです。

決算を迎えると、法人税や住民税は、原則として決算日から2ヶ月以内に納税する必要があります。また、消費税も同様に決算日から2ヶ月以内に納税しなければなりません。これは、企業にとっては大きな資金の支出となります。

こんな時期に、他にも大きな資金を支出しなければならないとしたら、どうでしょうか?

一気に、手持ちの資金が少なく、いや、枯渇する場合もあり得るかもしれません。なので、毎年固定的に大きな資金の支出が予測される時期と決算月をずらしておくという考え方が出てくるわけです。

例えば、ボーナスなどを支給する7月や12月は、大きな資金の支出となるので、この時期と納税時期が重ならないようにするというようなことです。

納税時期が決算月から2ヶ月以内であることを考えると、7月にボーナス支給がある場合は、4月や5月を決算月にしていると、ボーナス支給時期と納税時期が重なることになりますし、12月にボーナス支給がある場合は、9月や10月を決算月にしていると、ボーナス支給時期と納税時期が重なることになります。

ですので、ボーナス負担の額が大きい会社では、4月と5月、あるいは、9月と10月を決算月にするとボーナス支給時期と納税時期がぶつかってしまうことになりますから、これらの月の売上げなどによる現金収入があまり見込めない場合などは、これらの月を決算月にすることは避けたほうがよいかもしれません。

在庫高

決算月には、在庫の棚卸しという作業があります。棚卸とは、商品などの会計上と実在の在庫金額の差異を調べるために、実際に在庫をカウントする作業です。実際に在庫をカウントするわけですから、在庫の多い企業などはかなりの作業量が必要となります。このような棚卸しの作業量を考えると、なるべく在庫の少ない時期にやると、掛かる労力は大幅に軽減されることになります。

小売業やアパレル業界で2月や8月に決算月を設定している企業が多いのは、シーズン品をバーゲン品として処分する時期なので、この時期が一番在庫高が少なくなるからなのです。在庫を大量に抱えるようなビジネスでは、「棚卸しにかかるコストを最小限に抑えるためには何月決算が望ましいか?」ということも考慮してみるべきでしょう。

需要のピーク

需要のピークも、事業年度を決める際に考慮しなければならない一つです。

重要のピーク=決算月

まず、あえて需要のピークと決算月を合わせるという考え方があります。

これは、一番売上のボリュームの高くなる時期に『全社あげて今期の予算を達成しよう!』という追い込みのキャンペーンを打ち出すことによって、最大限の売上を確保するべく社員を鼓舞するために決算を利用するという考え方です。

需要がピークになる時期は、追い込めば追い込むほど売上を伸ばせる環境にある時期と言えます。売上が上がり良い決算を迎えられると社員の給料にも反映されることになるので、それだけ社員は頑張るわけです。

また、売上ピーク時の売上金は納税時期までには回収できる可能性が大きいわけですから、資金繰りも楽になると考えられます。

需要ピーク時に決算月を持ってくる典型的な例とすれば、住宅系建設業界が挙げられます。賃貸などの住宅物件の需要がピークになるのは、やはり人事異動の多い時期や卒業入学の時期の2〜3月なので、この時期に決算月を持ってくるわけです。

営業社員の士気によって会社の業績が大きく左右されるような業界は、「需要のピークに決算月を合わせる」という考え方もあることを考慮しておきましょう。

需要のピーク前に決算期

前の説明とは逆になりますが、決算月を需要のピークから外して、重要のピークを迎える直前に決算期を置くという考え方もあります。例えば、3月が需要のピークなら、2月を決算月にするというものです。

実は、「需要のピーク時と決算月を合わせる」というのは、節税対策という面では、計画的に対策を打ちにくいという欠点があります。なぜなら、需要のピークを決算月に設定すると、予想した利益が大きくぶれてしまう可能性もあり、適切な節税対策が打ちにくいからです。

これに比べて、「需要のピークを迎える直前に決算月を置く」というやり方は、事業年度の初めに需要のピークが来るわけですから、事業年度の初めに多くの利益が計上されるので利益予測がブレが少なくなり、計画的に節税対策を講じていくことが可能になるというわけです。ただ、決算業務と繁忙期が重なることにもなるので、その辺も考慮しなければならないことには注意しなければなりません。


それでは、最後の基本事項「公告」について説明することにしましょう!

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