本店所在地を決める際に注意にすること

本店所在地を決める際には、「その場所が本店所在地として相応しい場所なのか?」「本店所在地の地番以降の表記をどうするのか?」などを考慮した上で決めた方がいいのではないかと思います。それぞれについて説明することにしましょう。

本店所在地に相応しくない場所とは?

本店所在地をどこにするかについては、会社法上、特に制限はありません。しかしながら、会社法第442条には『株式会社は、次の各号に掲げるもの(以下この条において「計算書類等」という)を、当該各号に定める期間、その本店に備え置かなければならない』という規定があります。

この条文から、本店には、少なくとも計算書類等を備え置くことができなければならないことが分かります。そうなると、制限はないとは言うものの、計算書類等を置けない場所を本店所在地に選んではいけないということになります。

例えば、まったく関係のない人の自宅や会社の営業所を本店所在地にするとか、公共施設などを本店所在地にするとかはできないということになるわけです。

あと、代表取締役などの自宅を本店所在地とすることは構わないのですが、その自宅が賃貸の場合には、賃貸契約書上の使用目的をチェックしておく必要があります。

例えば、賃貸契約書に「住居用以外の使用を認めていない」というような記載がある場合には、大家さんや管理会社に、本店所在地として登記することの了承を得ておく必要があります。「住居用以外の使用を認めていない」という規定が契約書上にあったとしても、実質的な営業活動をしないことを話をすれば、意外と了承してくれるケースは多いようです。黙ったまま、自宅を本店所在地として登記して、それがあとで大家さんなどにバレた場合、契約違反で退去を余儀なくされるケースもあります。

また、大家さんや管理会社に了承を得れば万事OKかというと、それでも不都合が生じる場合があります。それは、許認可事業をやる場合などです。これは、賃貸物件だけでなく、自己所有の物件であっても関わってきますので注意が必要です。

許認可は、業種によっては、事務所の形態に条件を求めている場合があります。それは、例えば、スペースであったり、事務所と居住スペースが明確に区分出来ていることであったり。そういう条件に合致しない場合には、やはり自宅を本店所在地にすることはあきらめなければなりません。

どうしても自宅を本店所在地にしたい場合には、本店所在地以外の営業所を別に持つことで解決を図らなければなりません。

本店所在地の地番以降の表記

「本店所在地とは?」のページで、定款上には最小行政区画である市区町村までの記載でいいが、登記上は地番まで記載しなければならないことを説明しました。では登記上での記載の地番以降の表記はどうすればよいでしょうか?つまり、ビル名やマンション名や階数や号室までを記載するかどうかということです。

一つには、郵便物の配達上の問題があります。

税務署などから、本店所在地宛てに郵便物が届く場合があります。その際に、ビル名や号室が書いていなければ、郵便物が届かないということが想定されます。しかし、これは、税務署などの届出の方にビル名と号数を書いておくことで解決できます。また、本店所在地には地番までしか書いていなくても、名刺の方にはビル名や号数まで記載することは自由なので、顧客や取引先に対する郵便物の心配も要りません。

むしろ、ビル名・マンション名までを表記するかどうかというのは、マーケティング上の問題なのではないでしょうか?これは、取引を開始する際に、取引先は登記事項証明書で会社の内容を調べることもあるという前提での話です。

例えば、自宅を本店所在地にする場合に、「●●ハイツ」などのマンション名までを記載したとします。このような表記がされていれば、本店所在地が自宅兼用ではなかいと推測され、事業の規模がそんなに大きくないのではという印象を持たれ、事業がまだ安定していないと判断されないとも限りません。なので、自宅のマンションなどを本店所在地にする場合は、マンション名や号数などの記載は不要だと思われます。

逆に、本店所在地に「六本木ヒルズ森タワー35F」などと記載されていれば、取引先はどういう印象を持つでしょうか?

「六本木ヒルズ森タワーの家賃は高額だと聞いているぞ。ここの事務所を構えられるなんて、かなり財政基盤がしっかりしていて、事業も安定しているのではないか。」…このような印象を持つ方も多いのではないでしょうか?

森タワーのように有名なビルでなくても、商業ビルにちゃんと事務所を構えている場合などは、事業が安定しているという印象を取引先から持たれ易いのではないでしょうか。

なので、商業ビルの一室を借りて、そこを本店所在地にする場合は、ビル名や階数などの記載をしておく方が、イメージ的に良い印象を持ってもらえるのではないかと考えます。

しかしながら、商業ビルの場合、ビル名や階数や号数を記載しておけば何の問題もないかというと、そうではない場合もあります。

例えば、ビルのオーナーが代わって、ビル自体の名称も変わる場合があります。この場合、本店所在地にビル名まで記載していると、本店所在地の移転登記をしなければならなくなります。本店所在地の場所がまったく変わっていないのに、本店所在地の移転登記をしなければならないのです。ビル名がオーナーの個人名が入っている場合には、こういうケースもあり得ることを念頭に置いておかなければなりません。

次に、階数を記載していた場合を考えましょう。例えば、事業が拡大して、今の事務所では手狭になり、同じビルの違う階に事務所を移転したとします。この時に、本店所在地にビル名と階数を書いていなければ何もすることはないのですが、階数を記載していれば、やはり本店所在地の移転登記をしなければならなくなります。

ちなみに、上記のような本店所在地の移転登記には、登録免許税が3万円掛かることになります。もちろん、手続きを専門家に依頼すれば、その報酬代金もプラスして支払わなければなりません。


それでは、次は「株式」について説明することに致しましょう。

次ページへ 次は、「株式とは?」に進む

このページのトップへ