取締役を決める際に注意にすること

株式会社の株主(オーナー)が集う「株主総会」の次にもっとも重要な機関は「取締役」です。それは、取締役が会社の経営全般を担うことになり、会社の今後の繁栄はこの取締役の力量に掛かっていると言っても過言ではないからです。

さて、この「取締役」という機関(地位)になる者は勝手に決まるわけではありません。例えば、株主が自動的に経営も担う取締役になるわけではないのです。それでは、どういう風に取締役が決まるかと言うと、株主が集う株主総会の決議で決定することになります。つまり、株主がその会社の経営権を、選任した取締役に委任することになるわけです。

このように株式会社の取締役は自動的になるわけではありませんので、そこには当然に決める際の注意点があります。取締役を決める際の主な注意点は、以下の3点です。

  1. 取締役になれない者
  2. 許認可の要件
  3. 取締役の任期

それでは、上記の注意すべき内容を一つずつ説明することにいたしましょう。

取締役になれない者

取締役には、以下に該当する者はなることができませんので、該当する人を選択しないように気を付けなければなりません。。

  1. 成年被後見人又は被保佐人
    ※該当する人は東京法務局で登記されますので、「登記されていないことの証明書」でこれを証明することになります。成年被後見人とか被保佐人というのは、精神上の障害で意思能力の欠けている状況と家庭裁判所の審判を受けた者のことになります。
  2. 会社法、証券取引法、破産法など会社に関連する法律違反の罪を犯し、刑の執行が終わり、または刑の執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  3. 上記2以外の罪を犯して禁固以上の刑に処せられ、または刑を受けることがなくなるまでの者(執行猶予中の者は除く) 
  4. 法人
    ※株主には法人もなれますが、取締役には法人がなることはできません。

ちなみに、未成年者でも、法定代理人の同意があれば取締役になることができます。しかしながら、取締役には意思能力が必要なことから、意思能力が無いとされている10歳未満の幼児は取締役になれないことになります。また、取締役会を設置しない株式会社を設立する場合、会社設立の手続き上、取締役になる者の印鑑証明書が必要になりますので、印鑑証明書を取得することができない16歳未満の者は取締役になれないことになります。逆を言えば、取締役会を設置する株式会社の取締役なら11歳以上16歳未満の者でも理論上は取締役になれるということになります。

あと、取締役が1名の場合はその者が代表取締役に成り、取締役が複数の場合は全員が代表取締役に成るか、その中から代表取締役を選任することになりますが、代表取締役の内、少なくとも1名は日本に住所を有していなければなりませんので、そこにも注意が必要です。

許認可の要件

会社を設立してすぐに建設業許可などの許認可を取得しようとしている場合には、取締役を決める時に注意しなければなりません。それは、許認可事業によっては、取締役になる人にある条件を課している場合があるからです。

例えば、建設業許可などは、その許可を与える条件として、株式会社の場合なら取締役に「経営業務の管理責任者」がいることが条件となっています。この条件を満たしていないと建設業許可を取得することができないので、事業に大きな支障をもたらすことになります。

さて、その経営業務の管理責任者」とは、どのような者のことなのでしょうか?以下の説明をご覧ください。

【経営業務の管理責任者】

申請者が法人である場合には、その役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずるものをいいます。以下同じ。)のうち常勤であるものの1人が次のアからエまでのいずれかに該当するものであること。

  • ア 建設業の許可を受けようとする業種に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
  • イ 建設業の許可を受けようとする業種以外の業種に関し7年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
  • ウ 建設業の許可を受けようとする業種に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位(使用者が法人である場合においては役員に次ぐ職制上の地位をいい、個人である場合においては当該個人に次ぐ職制上の地位をいう。)にあって次のいずれかの経験を有する者
    (a)経営業務の執行に関して、取締役会の決議を経て取締役会又は代表取締役から具体的な権限委譲を受け、かつ、その権限に基づき、執行役員等として5年以上建設業の経営業務を総合的に管理した経験
    (b)7年以上経営業務を補佐した経験
  • エ 国土交通大臣がアからウまでに掲げる者と同等以上の能力を有すると認定した者
    ※「業務を執行する社員」とは、持分会社の業務を執行する社員をいい、「取締役」とは、株式会社の取締役をいい、「執行役」とは、委員会設置会社の執行役をいいます。また、「これらに準ずる者」とは、法人格のある各種組合等の理事等をいいます。

このように許認可によっては、取締役に業務経験者や資格者を置かなければならない場合がありますので、注意が必要なのです。

取締役の任期

取締役の任期が終了すると株主総会で新たにまた取締役を選任しなければなりません。そして、新たに選任した者を登記する必要があります。 登記には、費用(登録免許税)が必要になります(取締役変更登記の場合の登録免許税は1 万円です)。 これは、例え取締役に変更がなかったとしても、一旦任期が終了するわけですから新たに選任しなければならないのです。つまり、任期を長くすれば、新たに取締役を選任する機会が減るわけですから、手間や費用を省くことができるわけです。ちなみに、非公開会社(株式譲渡制限会社)では、取締役の任期を10 年まで伸長することが出来ます。
「それなら、費用や登記の手続きの手間を節約するために最長の10 年にしておけばいいのではないか?」と思われるかもしれませんが、安易にそう決めてしまうと、後々大損害を被ることがあるので注意が必要です。
それでは、どれくらいの任期が妥当なのか、私なりの提案を以下に示します。

  1. 発起人が1名であって、その発起人が取締役になる場合
    取締役任期:10 年
  2. 複数の取締役であって、その取締役同士が家族関係などである場合
    取締役任期:5 年〜10 年
  3. 複数の取締役であって、取締役同士が知人・友人などである場合
    取締役任期:2 年〜4 年
  4. 発起人となる人と、取締役となる人が違う場合
    取締役任期:2 年(新会社法が施行されるまでは、取締役の任期は2年しかありませんでした。)

これを見ていただいてお分かりいただけると思うのですが、取締役同士(または、株主と取締役)の関係性が深いほど、その任期を長く設定しています。それでは、 「なぜ、関係性の違いによって任期を変えた方がいいのか」という根拠を説明させていただきます。それは、取締役を解任する場合にその任期が問題になってくる場合があるからなのです。

最初は同じ志でやっていても、年数が経過すると経営方針の違いが生じてくるというのはよくある話です。そんな時は、意にそぐわない取締役を株主総会の決議で解任することもできます。 しかし、ここからが問題で、解任できるにしても、その解任した取締役が「自分は取締役の責務をきちんと果たしている。解任によって生じた損害を請求する。」といったような主張をすることがあり得るわけです。もちろん、背任行為があったなど、解任するのに正当な理由がある場合には、損害賠償などは請求しても無駄なのですが。
ちなみに、判例である「大阪高裁昭和56 年1 月30 日判決」では、『取締役の解任に「正当な理由」が認められない場合に賠償すべき損害の範囲』が以下のような「取締役が解任されなければ在任中及び任期満了時に得られた利益の額」と定められています。

【取締役が解任されなければ在任中及び任期満了時に得られた利益の額】
具体的には、以下の1〜3の合計額に相当する額。

  • 満期までの取締役報酬
  • 取締役賞与(定款の定め等により賞与を受け得たといえる場合に限られます)
  • 退職金(定款の定め等により退職金を受け得たといえる場合で、解任により退職金が「減額」もしくは「なし」とされた場合)

この判例に基づき損害賠償の金額を判定するのであれば、残存する任期が長ければ長いほど、解任した取締役に支払わなければならない損害賠償の金額が高くなるというrリスクがあるわけです。 例えば、年間報酬1,000 万円で残任期間が5年間残っていたとしたら、5,000 万円以上の損害賠償を払わなければならない可能性も出てくるわけです。

ですので、取締役同士(または、株主と取締役)の関係性が薄い場合は、取締役の任期はなるべく短くしておいた方が、損害賠償金額を支払うようなことになった場合に、その支払う金額を最小限に抑えることができるということになるのです。身内の場合でもそういう可能性がないわけではありませんが、そこは割り切って考えるしかないと思います。

このように取締役の決める際には、目先の利益のことばかりに捉われるのではなく、将来的に起こり得るリスクも想定して決めるべきだということが分かっていただけたのではないでしょうか。


それでは、次は会社の「本店所在地」について説明することに致しましょう。

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